バラバラだった工場の品質データを1つの画面に ― 「誰が・いつ・何を変えたか」がすべて残る操業基盤
西日本の化学製造業の工場で、紙とExcelに散らばっていた操業記録・検査・生産計画・品質会議をひとつのWebシステムに集約。すべての変更が自動で履歴に残り、間違えても安全に元へ戻せる安心の土台と、AIによる分析・異常チェック・議事録づくりの支援を、FDEの現場伴走とAI活用開発で短期間に立ち上げた。

背景・課題
化学プラントの品質管理では、毎日の操業記録・検査・生産実績・回収品質といったデータが、部署ごと・帳票ごとにExcelや紙で別々に管理されがちでした。データの置き場所が分かれているため、品質会議の資料づくりに手間がかかり、過去との比較や異常の早期発見が担当者の経験や勘に頼りがちでした。
また、製造業の品質記録では「誰が・いつ・何を変更したか」をたどれること(トレーサビリティ)が品質保証の必須要件です。手作業の記録・修正には書き換えや入力ミスが紛れ込むリスクがあり、ミスを安全に元へ戻す手段も乏しい状態でした(想定)。さらに、会議で決まった改善策が「記録しただけ」で終わり、担当・期限・進み具合まで追えない『やりっぱなし』も課題でした。
アプローチ ― FDE × AI駆動開発
AI-Path は、Forward Deployed Engineer(FDE:お客様の現場に入り込んで一緒に作るエンジニア)が現場に伴走し、お客様の業務を一緒に理解しながら作る進め方を採りました。いきなり大きなシステムを作るのではなく、まず現場でいちばん効く『設備(釜)ごとの生産計画づくり』から着手。そこで現場の帳票や工程の知識を吸い上げ、操業記録・検査・品質会議・分析へと、使われ方を確かめながら段階的に機能を広げています。
開発にはAIを活用し、画面や機能を素早く作っては現場で確かめるサイクルを高速で回しました。さらに、その工場ならではの工程の知識(判断基準・手順・専門用語・設備)をシステムに覚えさせ、AIによる分析が『現場の文脈をふまえた答え』を返せるように。どこにでもある汎用システムではなく、その現場の業務にぴったり合う道具に仕上げました(一部体制詳細は想定)。
ソリューション
現場の日々の入力から、会議・分析・改善までをひとつの画面でひと続きに提供します。
- データ入力: 操業日報・工程検査・生産記録・回収品質などを、Excelのような表形式の画面でそのまま入力。手元のExcel/CSVからの一括取り込みや入力テンプレートのダウンロードにも対応し、現場の使い慣れたやり方を崩しません。
- 品質会議・アクション管理: 会議の議事録を画面上で記録し、決まったことを『担当者・期限つきのToDo』としてそのまま登録。誰が何をいつまでにやるかが見えるので『やりっぱなし』を防げます。
- 分析・ダッシュボード: 操業データの推移や、設備別・用途別・工場別の集計を自動でグラフ化。やるべきこと・変更点・お知らせ・異常の兆しを1つのダッシュボードにまとめて表示します。
- AIによる支援: グラフの内容を読み解いて要点を説明したり、判断基準から外れた数値の原因候補を提案したり、会議メモから議事録の下書きを作ったりと、現場の負担を減らすAI機能を備えています。
全体は『現場で入力 → 品質会議・ToDo → AIで分析・異常チェック → 変更点・課題の管理 → ダッシュボードで共有』という改善のサイクルに沿って使えます。
利用サービス
- FDE(Forward Deployed Engineer)による現場伴走開発
- AIを活用したシステム構築
- AIエージェント/生成AIの業務活用支援
- セキュリティ・ガバナンス設計(操作履歴・巻き戻し)
技術・アーキテクチャ
長く安心して使える、無理なく広げられる構成を採りました。
- 堅牢でスケールする構成: 利用が増えても安定して動き、機能を後から足していける、実績ある技術で組み立てています。短期間での立ち上げと、その後の継続的な機能追加を両立しました。
- 既存のやり方と無理なく連携: 現場が使い慣れたExcel/CSVをそのまま取り込めるなど、これまでの業務の流れを壊さずに移行できる設計です。
- AIの利用状況が見える: AIをどの機能で・どれだけ使ったか、コストの目安まで記録しているため、効果と費用を把握しながら無駄なく運用できます。
採用している主な技術は『技術スタック』一覧をご覧ください。
セキュリティ・ガバナンス
操作の履歴がすべて残り、ミスは戻せて、見られる範囲は役割ごとに分かれている ― 経営の安心材料を設計段階から作り込みました。
- 『誰が・いつ・何を変更したか』がすべて自動で残る: 主要なデータの変更はすべて自動で記録され、後から確認・巻き戻しができます。記録そのものも保護され、あとから消したり書き換えたりはできません。監査や品質保証で問われたときにすぐ証跡を示せます。
- 間違えても安全に元へ戻せる: 1か所の入力ミスはその部分だけ、一括取り込みのミスはまとめて、画面の操作で元に戻せます。戻した操作自体も履歴に残り、戻せる権限は管理者・運用担当に限定しています。
- 記録は長く・確実に保管: 操作履歴は自動でアーカイブされ、長期間さかのぼって確認できます。
- 見られる範囲は役割ごとに分かれている: 利用者の役割(管理者・運用・閲覧など)に応じて、見える・操作できる範囲を自動で制限します。ログインも安全性に配慮した方式です。
- 第三者の目で点検し、優先度の高い指摘はすべて対応済み: セキュリティの専門的な点検を実施し、重大度の高い項目はすべて解消。残課題も計画的に改善を続けています。
これらは ISO 9001 / ISO/IEC 17025 といった品質マネジメントの国際ガイドラインが求める『変更記録の確実さ』『誰がいつ変えたかの特定』『変更前後の確認』『記録の保護』『長期保存』に沿う形で実装しています。
成果 ― 定性
- データが透明になった: 操業記録・検査・品質会議がひとつの画面に集まり、『誰が・いつ・何を変更したか』を後から確認できるようになりました。間違えても安全に元へ戻せます。
- 会議が動くようになった: 議事録づくりと会議で決まったことのToDo管理がつながり、決定事項が担当・期限つきの改善行動として追える運用に近づきました(想定)。
- AIを安心して使える: AIの利用状況・コスト・権限をきちんと管理し、その現場の工程をふまえた分析や異常の原因候補を得られます。
- 会社の知識が資産になった: 工程の判断基準・手順・専門用語・分析の着眼点をシステムに蓄え、品質会議の分析が特定の人に依存せず組織の知識として引き継げる土台ができました。
想定導入効果(年商100億円規模での試算モデル)
※下記は実測値ではなく、同規模・同業務での一般的な改善幅から試算した想定値です。実際の効果は環境により異なります。
- 品質会議の分析資料づくり(集計・転記・グラフ作成): 1回あたり 約4〜8時間 削減(試算)
- 監査・トレーサビリティ対応(誰が・いつ・何を変更したかの調査): 調査工数を大幅に削減(試算)
- 操業・品質データの転記/二重入力: 年間 3〜6人月 程度の削減(試算)
- 改善アクションの実行率(やりっぱなし防止): 向上(試算)
内製化・運用・今後
クラウドのサービスを中心に組み立てているため、運用や保守の手間を抑えられます。さらに、工程の判断基準やAIへの指示・現場の知識といった『運用ルール』は、現場の管理者が画面から自分で編集できる設計です。少しの変更のたびにベンダーへ依頼する必要がなく、現場のスピードで改善を続けられます。
セキュリティとガバナンスは『やって終わり』ではなく、継続して改善するプロセスとして運用しています。今後は、蓄積した操業・品質データとAIをさらに組み合わせ、異常の予兆をつかむことや、品質会議での意思決定支援を深めていく余地があります(想定)。
化学の品質管理でいちばん大事なのは、『誰が・いつ・何を変更したか』を確実にたどれることです。本案件では、まず設備ごとの生産計画づくりから始め、現場の帳票や工程の知識を一緒に吸い上げながら、品質管理全体へと少しずつ広げていきました。すべての変更は自動で履歴に残り、間違えても1か所だけでも一括取り込みごとでも安全に元へ戻せます。出来合いのパッケージではなく、御社の現場に効く『業務に効く道具』に作り込むこと ― それがFDE × AI活用開発の価値だと考えています。
― AI-Path|本プロジェクト担当FDE