化粧品メーカーの生産計画システムを、自社管理のクラウドへ全面移行 ― AIを活用したスピード開発で
化粧品メーカーの生産計画・製造管理システムを、AI-Pathの専任エンジニアが現場に入り込んで再構築。まず使える形を素早く立ち上げ、その後「自社で管理できるクラウド」へ安全に移し替えました。利用者19名・全業務をそのまま引き継ぎながら、運用コストの見通しと情報セキュリティの両方を強くしています。

背景・課題
ひとことで言うと: 「動く仕組みはあるが、このまま会社の基幹システムとして任せきれない」という状態を解消したい、というご相談でした。
化粧品の製造現場では、製造計画・仕込み・充填・仕上げ・週間計画・製造依頼といった複数の段取りが密接に連動します。導入前は、こうした段取りの知識が一部のベテラン担当者に集中し、計画づくりが「その人がいないと回らない」状態になっていました。試作版のシステムはすでに動いていたものの、本格運用に向けて次の不安が残っていました。
- クラウドを自社の管理下に置きたい: 当初は外部のクラウドサービスに大きく依存しており、データ・ログイン・ファイル保管を自社で管理できるクラウドにまとめたいという要望がありました。
- ログイン・権限の仕組みがなかった: 試作版は誰でも全データを見られる状態で、生産計画という重要情報に対する閲覧・操作の制限がありませんでした。
- 毎月のコストを見通せるようにしたい: 将来の拡大も見据えつつ、月々の費用をあらかじめ見積もれる構成にしたいという要望がありました。
- 特定サービスへの偏りを避けたい: 一つのサービスに過度に依存せず、広く使われていて運用しやすい仕組みに寄せたいという意向がありました。
アプローチ ― FDE × AI駆動開発
ひとことで言うと: 「素早く形にし、その後で安全に作り替える」二段構えで、止めずに・戻せる形で進めました。
AI-Pathの専任エンジニア(FDE=お客様の現場に入り込み、業務理解からシステム設計・構築まで一気通貫で担う専任エンジニア)が、業務の理解とシステム設計の両方を一人で担い、現場と同じ目線で進めました。
- まず動くものを素早く形に: いきなり完璧を目指さず、現場で使える試作版を先に立ち上げて業務イメージを固めました。
- その後、巻き戻し可能な手順で移行: 一度に全部を入れ替えるのではなく、「土台づくり → データの引っ越し → 中身の差し替え → 切り替え → 動作確認」と段階に分け、各段階で「問題ないこと」を確認してから次へ進みました。途中で不具合が起きても影響を一部にとどめられる進め方です。
- 判断の理由を文書に残す: 移行先の選び方を、費用・運用しやすさ・データ規模への適合という観点で比較し、「なぜこの構成にしたか」を記録。後から誰でも経緯を追える状態にしました。
- 大量・単純な作業はAIで加速: 動作確認のための大量のテスト作成など、手間のかかる作業の一部にAIを活用し、短期間で広く品質を確認できる体制をつくりました。
ソリューション
ひとことで言うと: 紙やExcelに散らばっていた生産計画と依頼業務を、1つのWeb画面にまとめ、権限つきで安全に共有できるようにしました。
生産計画の業務をWebシステムにまとめ、計画・依頼・各種マスタを1つの基盤で扱えるようにしました。
- 計画管理: 製造計画・仕込み計画・充填・仕上げ計画・週間計画を1つの画面で一元管理。カレンダー表示やドラッグ操作・その場編集で、画面を行き来せずに作業できます。
- 依頼管理: 製造依頼・作業依頼に決まったルールで自動採番し、複数段階の承認・確認の流れを電子化。部門をまたいだやり取りがシステム上で完結します。
- マスタ管理: 製品・品目・製造ライン・装置・社員などの基礎情報を、「いつからいつまで有効か」を管理しながら登録・更新できます。
- 役割ごとの権限: 「生産計画担当」「製造管理責任者」「品質管理担当」などの役割を定め、人ごとに「見る/編集する/承認する」の範囲を分けて管理。1人が複数の役割を兼ねる現場の実態にも合わせ、割り当ては画面から変更できます。
- AIによる計画チェックの土台: 計画内容に対するAIのチェック結果を残せる仕組みを用意し、将来の品質向上に活用できる下地を整えました。
利用サービス
- 専任エンジニア(FDE)による伴走開発
- AIを活用した実装・テスト
- 自社管理クラウドへの移行設計
- ログイン・権限(アクセス制御)の仕組みづくり
技術・アーキテクチャ
ひとことで言うと: 外部依存の大きかった構成から、「自社で管理できる堅牢なクラウド」へ全面的に移し替えました。
- 自社管理のクラウドへ全面移行: データ・ログイン・ファイル保管を、自社の管理下にあるクラウド(AWS)に集約しました。
- 事業拡大に耐える堅牢な構成: 利用が増えても無理なく拡張でき、止まりにくい構成を採用。重要情報は外部から直接触れない場所に隔離しています。
- 標準的で運用しやすい技術に統一: 広く使われ、運用ノウハウの豊富な技術にそろえることで、担当者が代わっても引き継ぎやすくしました。また、システムの設定そのものを「文書(コード)」として残し、同じ環境をいつでも再現できるようにしています。
採用した具体的な技術名は、本記事の技術スタック(チップ)にまとめています。
セキュリティ・ガバナンス
ひとことで言うと: 「誰でも全部見られた」状態から、「ログインした人が、自分の役割の範囲だけを扱える」状態へ。重要データは暗号化し、社外に出さない設計です。
- ログインで守る: 以前は誰でもデータにアクセスできましたが、全画面にログインを必須化。ログインしていない人は中に入れません。
- 役割ごとに権限が分かれる: 役割に応じて「見るだけ/編集できる/承認できる」を自動で切り替え。担当外の操作はできない仕組みです。本番への切り替え時は、いきなり遮断せず「もし制限していたらどうなるか」を記録して安全に確認する慎重な進め方をとりました。
- データは暗号化・社外に出さない: 保存データは暗号化し、ファイル保管は外部から勝手に閲覧できないよう完全に遮断。パスワード等の秘密情報はシステムに直接書き込まず、安全な保管庫で管理しています。
- コストも統制: 想定を超える費用が出そうな場合に通知が届く仕組みを入れ、コスト面でも管理が効くようにしました。
- 残課題も透明に: 本番運用に向けた接続元のさらなる制限や、権限変更の履歴記録の整備などは継続課題として明らかにし、計画的に対応しています。
※ 事例化にあたり、実利用者の個人情報・社内機密・接続情報は一切外部に出していない。
成果 ― 定量
成果 ― 定性
- クラウドを自社の管理下に: 外部サービスへの依存から脱し、データ・ログイン・ファイル保管を自社管理のクラウドにまとめられました。
- 情報セキュリティが大きく前進: 「誰でも全部見られる」状態から、「ログインした人が役割の範囲だけ扱える」状態へ。重要データの扱いに歯止めがかかりました。
- 安全に進められた移行プロセス: 段階を分け、各段階で問題ないことを確認しながら大規模な移行を完遂。既存の動きが壊れていないことも確認済みです。
- これからの改善を速く回せる土台: AIを活用した開発の進め方を整えたことで、今後の機能追加や改修をスピーディーに進められる体制になりました。
想定導入効果(年商100億円規模での試算モデル)
※下記は実測値ではなく、同規模・同業務での一般的な改善幅から試算した想定値です。実際の効果は環境により異なります。
- 生産計画・製造依頼の作成/調整にかかる工数: 年間 6〜12人月 程度の削減(試算)
- 計画業務の属人化解消による、担当者交代時の引き継ぎ・教育コスト: 約50%削減(試算)
- 認証・アクセス権の統制整備による、監査・内部統制対応の準備時間: 約30%削減(試算)
- 紙・Excel併用からの脱却による転記・照合ミス: 大幅減(試算)
内製化・運用・今後
- 同じ環境をいつでも再現できる: クラウドの設定を「文書(コード)」として残しているため、環境の再現・複製・確認が容易で、特定の担当者がいないと回らない状態を避けられます。
- 判断の経緯ごと引き継げる: 構成を選んだ理由・移行の計画・進め方の記録などを残し、引き継ぎ時に経緯まで含めて渡せる状態にしました。
- 改善をお客様側でも回せる体制へ: AIを活用した開発の進め方が定着し、お客様側でも継続的な改修・機能追加に取り組みやすくなりました。
- 今後の拡張余地: 利用が増えたときのシステム増強、計画機能の拡張(四半期計画など)、権限変更の履歴記録の整備、本番運用に向けたセキュリティのさらなる強化を継続していきます。
まず動くMVPで現場の生産計画業務を素早く形にし、その上でVercel+Supabaseから自社管理のAWS内完結構成へ、巻き戻し可能なフェーズ移行で再構築しました。認証のなかった状態から業務ロールベースのアクセス制御まで一気通貫で設計できるのは、業務理解とクラウド設計を同じ担当者が担うFDEの強みです。中堅製造業のエンタープライズ運用に耐える基盤を、スピードを落とさず実現することを重視しました。
― AI-Path|本プロジェクト担当FDE