看護師100名規模のシフト・給与・スキル評価を、ひとつの仕組みに。33名・1か月分のシフトを数秒で自動作成
中堅医療法人の看護部勤務管理で、毎月手作業に頼っていたシフト作成・勤務時間の管理・給与計算・スキル評価を、ひとつのWebシステムにまとめてAI-Pathが構築。必要人数・夜勤や小児科の担当・月180時間の上限など現場のルールをそのまま仕組みに落とし込み、33名・1か月分のシフトを数秒で自動作成。特定のベテランに頼っていたシフト作りを、誰でも同じ基準で回せる状態にした。

背景・課題
病棟を持つ医療法人では、シフト作成が看護師長(管理者)の重く属人的な業務になりやすい。日勤・夜勤それぞれの必要人数、夜勤の責任者や小児科の担当、チームのリーダー確保、新人看護師の同時勤務制限、月の労働時間上限といった多くの決まりごとを、毎月Excelなどの手作業で組み直す負担が大きい。同じ規模の医療法人で一般的に見られる課題として、次が想定される。
- シフト作成がベテラン頼みで重い: 守るべき条件が多く、無理のないシフトを組めるのは特定の人だけ、という状態になりやすい。
- 労働時間の超過が見えにくい: 月180時間上限の確認が手作業で、超過に気づくのが後手になりやすい。
- 給与計算の手間とミス: 残業・夜勤・スキル・資格などの手当を個別に計算するため、勤務実績との突き合わせが手作業だと計算・転記のミスが起きやすい。
- 評価と処遇のつながりが不透明: スキル評価の基準が整っておらず、評価結果が手当などの処遇にどうつながるか本人に見えにくい。
- 関係者が多い: 看護部・人事・情報システム・経営層が関わるため、情報がきちんと守られるか・権限が適切に分かれているか・既存の仕組みと連携できるか、への説明が求められる。
アプローチ ― FDE × AI駆動開発
業務をよく知る担当者が、現場のルールを聞き取り、そのまま動く仕組みに落とすところまで一気通貫で担当。「現場が言いたいこと」と「出来上がる仕組み」のズレを抑えた。
- 現場のルールを、まず言葉で整理: 日勤・夜勤の必要人数、夜勤の責任者や小児科の担当を最低何人置くか、月の労働時間は180時間まで、といった配置の決まりごとを一か所にまとめて明文化。現場と合意した基準がそのまま仕組みに反映される形にした。
- シフトを自動で組むロジックを実装: 夜勤の責任者→小児科→残りの夜勤→リーダー→日勤の優先順位で各日の人員を埋め、勤務日数・休日数・夜勤回数に偏りが出ないよう公平に割り当て。条件を満たせないときは段階的に条件をゆるめて埋める二段構えにし、実際の人員でも無理なく組めるようにした。
- AIを開発の補助に活用: 決まりごとが多く確認すべきパターンが複雑な領域のため、開発とテスト作りにAIを活用し、シフト・給与・労働時間の計算を短いサイクルで検証しながら作り込んだ。
- 「なぜそうなるか」を共有できる状態に: なぜこの配置順なのか、なぜ180時間で調整するのかを、看護部・人事の関係者が確認できる形で残した。
ソリューション
看護部の勤務管理を、シフト・勤怠・申請・評価・給与をまたいだひとつのWebシステムとして提供した。同じ勤務実績がそのまま給与や評価につながるので、二重入力やズレが起きにくい。
- シフトの自動作成: 看護師ごとの条件(所属チーム、日勤/夜勤のどちらに入れるか、夜勤の希望回数、リーダーや夜勤責任者・小児科の担当可否)をもとに、1か月分のシフトを自動で組む。夜勤の翌日は自動で「明け(休み相当)」とし、月の労働時間が上限を超えそうな人は勤務日を自動で調整する。
- 労働時間の見える化: 看護師ごとの勤務日数・日勤/夜勤の回数・合計労働時間を集計し、月の目標に対して『良好/要注意/違反』を自動で判定。上限超過の兆しを早めに把握できる。
- 本人向けマイページ: 希望休や残業の申請を本人が出し、管理者が承認する流れ。自分の勤務状況や給与の推移も本人が確認できる。
- スキル評価: 評価項目ごとにレベルを記録し、その結果から4段階の評価ランクを算出。評価にも『申請→承認』の流れを設け、誰が承認したかが分かる。
- 給与の自動計算: 勤務実績(打刻データや自動作成したシフト)から労働時間・残業・夜勤回数を割り出し、基本給に加えて残業・夜勤・スキル・資格の各手当を自動で合算。月末にまとめて全員分を計算し直すこともできる。
- 通知・情報共有: 申請の承認などの出来事を通知として記録し、現場の連絡を電子化する土台を用意した。
利用サービスとしては、AI-Pathの担当者による伴走開発、現場ルールを仕組みに落とす設計(シフトの自動配置)、AIを使った開発・テストの効率化、安全なログイン・データ管理の基盤づくりを提供した。
利用サービス
- FDEによる伴走開発(Forward Deployed Engineer)
- 現場ルールを仕組みに落とす設計(シフトの自動配置)
- AIを活用した開発・テストの効率化
- 安全なログイン・データ管理の基盤づくり
技術・アーキテクチャ
規模が増えても無理なく動き、将来は別のクラウドや人事システムとも無理なくつなげられる構成にした。特定の製品に縛られず、コストや要件に応じて土台を入れ替えられる柔軟性を持たせている。要点は次の3点。
- 堅牢でスケールする構成: 利用者が増えても安定して動く、実績ある標準的な構成を採用。
- 既存業務と無理なく連携できる: 人事システムや勤怠打刻などとつなぐことを見越し、広く使われている標準的なつなぎ方で受けられるようにした。
- 土台を入れ替えられる柔軟性: データの置き場所やログインの仕組みを、利用側の使い勝手を変えずに差し替えられる設計。当初はある基盤で構築し、その後コスト最適化のため別のクラウド基盤へ無理なく移行できた。将来のコスト見直しや自社クラウドへの移行も低リスクで検討できる。
採用した具体的な技術名は技術スタック(tech_stack)に集約。詳細な内部実装は競合に手の内を渡さないため省略している。
セキュリティ・ガバナンス
職員の個人情報・勤務データ・給与情報という、特に慎重に扱うべき情報を守る前提で設計した。何が守られ、なぜ安心かを経営視点で整理する。
- 大切な情報が外に出ない: 職員情報・勤務・給与といった機微なデータと、システムの接続情報・パスワードに相当する値は、コードに直接書かず安全に管理。外部に漏れない運用とした。
- 権限が役割ごとに分かれる: ログインの仕組みを一か所に集約し、誰がどのデータを扱えるかを役割に応じて分けられる土台を用意。給与など特に慎重なデータの扱いも、運用に向けて段階的に強化していく。
- 操作の履歴が残る: スキル評価や残業・希望休の承認には『申請→承認』の流れと承認者の記録を持たせ、いつ・誰が承認したかを後から追えるようにした。
- 今後さらに強化する点(透明性のため明記): 本人は自分のデータしか見られないといったアクセス制限の本番強化、操作の監査ログの整備、役割ごとの表示制御の厳格化を、本番運用に向けた継続課題として可視化している。
※ 事例化にあたり、実在職員の個人情報・給与額・社内機密・接続情報は一切外部に出していない。本書中の人物表現はデモ用の汎用ラベルである。
成果 ― 定量
成果 ― 定性
- シフト作成がベテラン頼みでなくなる: 特定の人にしか組めない状態から、配置のルールを仕組みとして全員で共有。誰が操作しても同じ基準で、無理のないシフトを組める土台ができた。
- 労働時間の超過に早く気づける: 月の上限に対する『良好/要注意/違反』判定で、超過の兆しを早めに把握できるようになった。
- 評価と処遇のつながりが見える: スキル評価が手当に連動する形になり、評価とキャリア・処遇の関係を本人が確認できるようになった。
- 土台を入れ替えられる安心: 利用側の使い勝手を変えずに、データの置き場所やログイン基盤を差し替えられる構造を確保。将来のコスト見直しや基盤選定の自由度を持たせた。
想定導入効果(年商100億円規模での試算モデル)
※実測値ではなく、同規模・同業務の一般的改善幅からの試算です。
- シフト作成業務: 数十名×1か月のシフトを数秒で自動作成できるため、師長のシフト作成・調整を 月10〜20時間程度 削減(試算)。
- 給与計算: 勤務実績から手当を自動合算する構造により、手作業の転記・算定に起因する給与計算ミスを 大幅減(試算)。
- 勤務時間コンプライアンス: 月180時間上限の自動判定により、上限超過の見落としを 実質ゼロに近づける(試算)。
- スキル評価運用: 評価→手当連動の体系化により、評価作業・処遇説明の工数を 削減(試算)。
- 立ち上げ速度: 担当者主導+AI活用の開発により、要件の固まった機能を 短サイクルで検証付きリリース(試算)。
内製化・運用・今後
現場のルールが変わっても安全に直せ、特定の担当者やベンダーに縛られにくい。長く使い続けられることを重視した。
- 現場ルールの変更が一か所で済む: 必要人数や勤務時間の基準などを一か所にまとめてあるため、ルールの見直しを安全に反映でき、特定の担当者に依存しない保守ができる。
- 土台の入れ替えが局所で済む: データ管理とログインの仕組みを切り離してあるため、基盤の差し替えが一部の変更だけで済む。今後のコスト最適化や自社クラウドへの移行も低リスクで検討できる。
- AIを活かした継続開発: 決まりごとが多いシフト・給与の計算はAIによるテスト作りと相性がよく、機能追加やルール変更を検証付きで素早く回せる開発スタイルを確立した。
- 今後の拡張余地: アクセス制限の本番強化、操作の監査ログ、シフト希望のさらなる反映、メール通知、管理者向けダッシュボード、スマートフォン対応を計画的に整えていく。
シフト作成は、必要人数・夜勤の責任者や小児科の担当・労働時間の上限といった『現場が当たり前に守っているルール』を、毎月手作業で解き直す重い仕事でした。私たちはまず、その“暗黙のルール”を一つひとつ言葉にして整理し、そのまま無理なく回る仕組みに落とすことを大切にしました。数十名・1か月分のシフトが数秒で出てくること自体より、『なぜこの配置になるのか』を看護部・人事の皆さまと一緒に確認できる状態を作れたことが、この事例の一番の価値だと考えています。給与やスキル評価まで同じ勤務実績でつながるので、現場の負担とミスの起点をまとめて減らせる土台になりました。
― AI-Path|本プロジェクト担当FDE